「歌姫」挿絵1

 少年もセレインに気づいた。目と目が合い、真正面から相対してみると、あらためてその美しさにため息が出るほどである。やわらかな、ややつり上がり気味の曲線を描いた細い眉。高くとおった鼻筋も同じく細く、下手をすれば冷酷に見られがちだが、丸みを帯びた頬の線がきつさを消していた。唇はほんのりと紅く、何か言いかけた、その形のまま少し開いている。そして…目! じっとセレインを見つめた切れ長の、大きな瞳は暗い紫色をしていた。ラヴォールというこの惑星で代々過ごしている人間には紫色の瞳を持つものが多い。セレインの知人にも何人かいる。しかし、これほどまでに鮮やかな、深い色を見たのは初めてだった。
「誰?」
 低い声で、少年がつぶやいた。警戒している。

「歌姫」第一章より

 …で、リハビリ第一作がこれ。何しろ久しぶりだし、とりあえず昔描き慣れたセイくんから始めることにして、そしてポーズも簡単なやつ。よし、準備は完璧! いざっ!…てな具合にせこせこ下絵を描いて、いざ色塗りっ、と絵筆を取ったら、そこに思いがけない落とし穴がっ!
 どっ…道具がみんな、どこに出しても恥ずかしい骨董品になってるぅぅぅ~っ!!
 パレットなんか錆びついて、ナイフでこじ開けなきゃ開かないし、なくなりかけた絵の具を足そうとしたら、…げ。チューブん中で固まり切っちゃって出てこやしないじゃないかあああぁぁっ!! 主線用のカラーインクなんてとんでもないニオイになってるし、もしかして腐ってんじゃねーか、コレ…。おまけに筆の穂先まで描いてるうちに二つに割れてくるし…(あ、でもこれは昔からだったな)。
 まともな神経を持った人間なら速攻で捨てること間違いなし! でもそれを平気で使っちゃうところがオバサンという人種。
 描きましたともさ。腐りかけたインクでペン入れして、ガチガチの絵の具を力任せに押し出して。…それでできたのがコレかよ、おい、ってなもんで。も、笑うしかございませんわね~っ。おーっほっほっほっほっほっ!
 大体、何でアタシ「絹のタキシード」なんか着せちゃったわけ? こいつの普段着って、どれもみんな上下ともに綿100%のはずなのにっ。あー、どうせなら普段着姿描きゃよかった…と思ったのは色塗りに入ってから(←完全に手遅れ)。
 ですからどうか「あの場面なら背後にピアノやスタッフの姿がなきゃおかしい」なんてツッコミはご勘弁下さいませ。オバサン、人物描いただけで力尽きちゃったんですぅ~(号泣!)

 この次は謙虚に綿100%描くことにしよう…。

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