二次創作(パロディ)と著作権について―管理人の考え方―


 当サイトの「二次創作」のページには「サイボーグ009」のキャラクターを使って管理人が書いたお話が掲載されております。これはいわゆる「二次的著作物」に該当し、本来ならば原著作権者(石ノ森章太郎先生や石ノ森プロを始めとする関係各社様ですね)の許諾を受けなければなりません。つまり、無断でこそこそとこんなモンをサイトに掲載している管理人の行為は、厳密に言えば明らかな著作権侵害に当たります。なのにこうしてのうのうとしていられるというのはひとえに、原著作権者様各位がこのような行動をを黙認して下さっているからにほかなりません。管理人と致しましてはそのことに深く感謝し、原作のイメージをいたずらに貶めたりしないよう、今後ともパロディ(正式な許諾を得た本来の「二次的著作物」と区別するため、この文章においてはこちらの名称を使うことにします)を書く際には細心の注意を払っていくしかないのですが…

 しかしながらこの問題、単なる法的解釈を超えた、もっと複雑な内容を含んでおりますので、一応そちらについても管理人の考え方をあらかじめ皆様にお知らせしておきたいと存じます。
 パロディというのは単なる複製や無断転載ではありません。そこには必ず、パロディ作者本人の独創性が存在します。独創性のない丸写しの文章や絵を管理人はパロディとは呼びたくないし、認めたくもありません。そしてこの「独創性」の存在ゆえに、パロディというものを、各著作権者様方が無条件に禁止している(それは著作権者として当然の権利、措置です)無断転載や複製と同列に扱うことには疑問を感じてしまう…というのが管理人の本音なのです。
 元来、この手法は世界各国に古くから存在しておりました。日本でも、和歌や物語のパロディ(和歌の場合は「本歌取り」と呼ばれ、「千載集」後徳大寺に対する四方赤良の狂歌、物語の場合は「伊勢物語」に対する仮名草子の「仁勢物語」等が有名です)は、かつてごく当たり前の民衆文化として広く享受されてきたのです。
 また、現在自分で文章やイラスト、あるいは漫画を書(描)いていらっしゃる方のほとんどは、そのスタート時点において他者の手による優れた作品の真似をしていらしたのではないでしょうか。そして、書(描)き続けていくうちにパロディや同人活動を楽しむようになり、ついには立派なプロになられた方々も少なくないのではないかと推察致します。また、パロディがきっかけでその原作に興味を持ち、結果、原作の大ファンになった…という事例も皆無とはいえません(事実、管理人にもそういう経験があります)。
 加えて、《キャラクタとは、ご承知のように漫画やアニメあるいはゲイムなどに登場する人物や動物、その他の生物などのことを指しますが、例えば漫画であれば個々のコマに描かれた絵そのものではなく、むしろこれらのコマなどから集約される作品全体に流れる一貫したイメージのことを言います。こうした漫画やアニメから、いわば独立した「キャラクタ」そのものが著作権法によって保護され得るべき性質のものなのかどうか、多くの議論がなされているのです。》《抽象的概念である「キャラクターそのものの著作物性は否定すべきであって、それが具体的な漫画などに表現されたときに、漫画著作物の一部を構成するものとして保護されるにすぎない(半田正夫『著作権法概説 第9版』一粒社/1999年 95頁)」と解するのが最も妥当だと言えます。》(→《》内二ヶ所、共に『コンピューターユーザのための著作権&法律ガイド』プロジェクトタイムマシン著・弁護士 梅村 陽一郎監修 毎日コミュニケーションズ/2002年 103・104頁)という考え方もあります。
 以上のような理由により「法律によってパロディ全部を問答無用で禁止しちゃうのはどうだかなー」と管理人は考えております。またこれは管理人個人に限った意見ではないらしく、自作のキャラクターを使ったパロディや同人活動をはっきりと認めている漫画家の方もたくさんいらっしゃいます。

 しかしながら管理人には、上記の記述によって自分の行為を正当化しようという意図は全くございません。たとえ無断転載や複製ではなくとも他者の作品をもとに書(描)いている限り、著作物の翻案権や同一性保持権を侵害している(とみなされるであろう)ことには変わりがありませんし、昔はパロディが一般的だったという主張も「そんな時代には『著作権』っつー概念そのものがなかったんだから比べても無意味じゃねーの」と反論されればそれっきりです。
 それに、仮にキャラクターそのものの著作物性が否定されたとしても、誰が見てもはっきりそのキャラだとわかる形でその絵を描き、利用することは無断複製に当たり、著作権の侵害であるという最高裁の判例も出ています。何より、パロディや同人活動を認めている漫画家の方がいくらいらしたところで、「009」の原著作権者の皆様方がそのような見解を持っているという保証には全くならないのです。
 ですから、万が一原著作権者様から「このサイトのパロディは著作権侵害に当たる」という勧告を受けた場合には、管理人は即刻サイト内からパロディに該当するページ全てを削除するつもりでおります(ただし、悪戯や悪意ある妨害行為への自衛策として、一度はこちらからメールあるいは文書その他の手段によってその勧告の真偽を確認させて頂くことをどうぞお許し下さいませ)。また、原作本やアニメイラストのコピーはこのサイトには一切掲載いたしません(「BBSのマナー」のページで述べた「引用」は漫画の場合でも認められているそうですが、現在のところその予定もございません)。そしてもちろん「案内所」にも記載している通り、このサイトからの無断転載・複製も固くお断り申し上げます。

 だったら何故、こんな言い訳とも自己弁護とも取れる文章をわざわざ載せたのか。それは、こんなちっぽけなサイトとはいえWebに公開している以上、言い換えれば全世界の人々が自由に閲覧することができる状況に自分のパロディ作品を置いている以上、パロディというものに対する自分の考え方もはっきりと表明しておくべきじゃないかな、と思ったからにすぎません。
 著作権法は表現者の権利を守る大切な法律であり、全表現者が遵守すべきものであることは今更言うまでもありません。ただこの法律には「文化の発展に寄与することを目的とする(著作権法第1条)」という一面もあるわけですし、この「文化」という点から考えてみると、先にも述べた通りパロディをめぐる問題というのは非常に複雑な要素を内包しているのです。少なくとも、単なる好き嫌い、認める認めないという二元論だけでは片づけられない問題じゃないのかな、という管理人のささやかな主張もどうか、皆様のお心のほんの片隅にでもとどめておいてやって下さいますよう、心からお願い申し上げます。


おまけ 〜管理人オリジナル作品のパロディについて〜

 で。思いっきり蛇足なんですけど。パロディとともにオリジナルなんかも図々しく掲載している身としては、とりあえずの礼儀としてそちらについても一言。要するに、管理人オリジナルの話をパロディ化してもよいかどうかについてですが(そんな奇特な方はまずいないと思うぞ>自分)。
 どうぞ、好きなだけやっちゃって下さい(爆)。
 ええもう、表でも裏でもコメディでもギャグでもご自由にお使い下さいませ。出来上がった作品を献上しろ、なんてことも申しません。ただ、事前事後に関わらず、「こんなん書(描)きました〜」と一言お知らせ下されば管理人は泣いて喜びます。ただし、こちらについても作品丸写しの無断転載や複製は固くお断り申し上げます(だから、そんな物好きがいるわけないってば…>自分)。


参考文献について:今回引用させて頂いた「コンピューターユーザのための著作権&法律ガイド」には、管理人自身の考え方と一致する記述が各所に見受けられました。しかしながらルールに従い、引用は最小限にとどめ、できる限り管理人自身の言葉で語るよう心がけたつもりです。従いまして、《》内の引用部分以外の文責は全て管理人が負うものです。何卒ご了承下さいませ。


2003.06.27.      管理人
(2005.12.23.    一部改訂)






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