スカール様の慟哭 〜腹黒わんこ寝返り編〜 8


 忍び寄る悲劇の影も知らず、BG幹部連のどんちゃん騒ぎはますます派手になっていくばかりでした。そんな中、比較的正気のままで取り残されてしまった三人と一匹―これはもう完全素面のパピと横山くん、そして最初の乾杯にだけはつき合ったもののその後はほとんど飲んでいないシロオスラシ大佐とボグート氏―の心配りと気苦労がいかばかりであったかと言えばもう、想像するだけでも涙が出るというものでございます。

 しかしながら、もう一方の00ナンバーサイボーグどももまた、
(そっちに悲劇が忍び寄る前に、こっちは悲劇の真っ只中にいるんだよっ、どーしてくれんだコラァァァァァッ!!)
 とでも叫びたい心境だったのでしょうけれども…。
 突如出現した昔懐かし恐竜ロボットの姿にあっけにとられ、一瞬目を点にしてしまったのは003・005組、004・006組も同様でございました。そして次の瞬間申し合わせたように「お久しぶりね」を歌いつつ華麗に舞い踊る○柳ルミ子さんの幻覚を見たのも、その隙を突かれて先制攻撃のタイミングを逃し、かなりの苦戦に陥ってしまったのも、先の002・009組と全く同じだったのです。
 それでも004・006組の方はまだマシだったかもしれません。彼らの上陸地点は島の西側、切り立った絶壁―ある意味もっとも潜入が困難な場所ではありましたが、その崖には一箇所、巨大かつ深い亀裂が入っており、もともとこれを調査するのが彼らの一番の目的だったからでございます。
 なので恐竜ロボットのミサイルが火を噴くと同時にすかさずその亀裂に逃げ込み、とりあえずの避難場所確保には成功致しました。とはいえ、間一髪で二人を取り逃がした恐竜ロボットは何とか自分もその中に入り込もうとでもいうのか、すさまじい頭突き攻撃を繰り出してきます。おまけにこの亀裂を調べてみれば二十メートル先で完全に行き止まりというかなり厳しい状況でしたがそこはそれ、006の熱線で岩壁を溶かし、トンネルを掘って何とか脱出しようと試みます。
 とりあえず、崖の頂上を目指してひたすら上へ上へと岩を掘り進めて行く006。そのあとに続く004が、ふと何かを思いついたように声をかけました。
「おい006、このままあの恐竜ロボットの真正面に出ることはできないか? もし奴がこっちに気づいて口を開けたら、俺のミサイルを叩き込んで一発でケリがつくぞ」
 しかし、006はもの思わしげに眉を寄せます。
「ふ…む…まぁそりゃ、できない相談とは言わんあるケド…。ぴったり正確にちゅうのは難しいあるヨ。何せこんな分厚い岩盤に四方八方囲まれちまてちゃ、敵はおろかわてら自身の位置すらようわからへん。大体のカンや見当でちゅうならともかく、狙いすましてあの恐竜の真正面にとなると、003がいなけりゃ到底無理アル」
「う…む」
 言い返されて、さすがの004も言葉を失います。確かに006の言うとおり、いかに強化された視力を持つ00ナンバーサイボーグとはいえ、こんなトンネルの中から恐竜ロボットの姿を察知することはできません。岩盤その他の遮蔽物をも見透かす透視能力を持っているのは、現在005と行動をともにしているはずの003だけなのです。
「はぁ…その003たちも大丈夫アルやろか。わてらみたいなこんなえらい目に遭うてへんとええんやけどナァ…」
 「003」の名前にその安否が気になったのか、006が深いため息を漏らします。と、そのとき二人の脳裏に思いがけない人物の声が響いてきたのでした。
(004! 006! 無事か!? こちら008!)
「008! 無事だったアルカネ!」
「どこにいるんだ!?」
(たった今、003・005組と合流したところだ。実は海中探索の途中で例の恐竜ロボットを見つけて007と二人、急遽そこから一番近い003たちの援護に向かったんだけど…。何とか合流はできたものの、あいつときたらものすごく頑丈でスーパーガンだけで応戦するのはどうにも苦しい。残念ながら今は全員海中に潜って奴の攻撃を避けるので手一杯といった状況だ)
「そうか…。そういえば奴はさほど水中戦は得意じゃなかったな」
(いっそ海中に向かってミサイルの一発も撃ち込んでくれればなぁ…。水中に突入したミサイルなら速度も落ちるだろうし、僕がそれを捕獲して005の力で投げ返してもらうこともできるんだけど…攻撃らしい攻撃もせず、ただ海上に居座っているだけなんだ。だから、最悪の場合にはこのまま水中から脱出を図ろうかとも考えている。それより、そっちはどうなんだ?)
 008の問いかけに、現状を説明する004。と、最後にその薄氷の瞳がきらりと光りました。
「008、そっちは今のところ全員無事なんだな? 003もか?」
(私は大丈夫よ。安心して、004)
 すかさず返ってきた003の脳波通信に、「死神」の口の端がにやりとつり上がります。
「003、そっちも大変なときなのにすまんが、君が今いる位置から俺たちとあの恐竜野郎の姿を捉えられるか? 何しろこっちもかなり厳しい状況だ、できれば俺たちがアイツの真正面に出られるように誘導してほしいんだが…」
(ええ、もちろん探索可能圏内よ!)
 頼もしい返事の後には少々の間。やがて、きっぱりとした少女の声が岸壁の中の二人に的確な指示を伝えてきます。
(そこから右十二度、上七度の方向に進んで! 距離はおよそ十五メートル。そう…そうよ…。あ…ロボットが少し位置を変えたわ。方向、左三度修正、上下角度はそのまま)
 003の誘導にしたがって岩盤を溶かし、穴を掘り進めて行く006の額にはいつしか大粒の汗が浮かんでおります。ですが彼とて歴戦の勇士、いかに事細かな指示であろうとこれっぽっちも違えるはずはございません。
 そして―。
(…そう! そこよ! 位置はぴったり、岩盤の厚さは残り〇.五メートル! 006の炎の一噴きで、貴方たちは恐竜ロボットの真正面に出られるわっ!)
 半ば絶叫にも似た003の脳波通信をキャッチするやいなや、006が渾身の力を込めて口から炎を吹きます。次の瞬間、岸壁に突然開いた大穴、噴き上がる火柱! 自らの鼻先に突如六〇〇〇度の炎を噴きつけられた恐竜ロボットはたまったものではありません。とっさに口を開けて応戦しようとしたものの、それより一瞬早く。
「喰らえっ!」
 気合いもろとも発射された004のミサイルが恐竜ロボットの口内を直撃、大爆発を引き起こしたのでございました。
 たちまち、爆発による炎と爆風が彼らのいるトンネルの中をも吹き荒れます。おかげで二人とも、せっかく掘った穴の途中まで吹き飛ばされるわ、飛んできた鉄や岩の破片であちこち傷だらけにはなるわ…気がつけば、防護服のあちこちにも焼け焦げができて、ぶすぶすとくすぶっておりました。
(004! 006! やったか!?)
 再び響いてきた008の脳波通信に、体のあちこちをさすりながらようやく起き上がった004が苦笑交じりに答えます。
「あ…ああ。何とかな。だが少々戦法が荒っぽすぎたか…大丈夫か、006」
 隣に目をやれば、同じくやっとの思いで身を起こしたらしい006が、ぜいぜいと肩で息をついております。
「ふぃーっ。危うくチャーシューになるトコだったネ。でもま、それでもこっちはこれで何とかめでたしめでたしアル。それより008! おまはんたちはこれからどうするのコト?」
「何だったら俺たちもすぐに援護に向かうぞ」
 今度は008たちの方が心配になったらしい004と006が口々に訊ねます。
 するとそこへ、またしてももう一つの新しい声が割り込んできたのでございました。
(みんな、無事かっ!? あの恐竜ロボットの弱点は顎のつけ根のボルトだ! そこならスーパーガンで攻撃できるし、破壊すれば恐竜の口は開きっ放しになる!)
「ゼ…009!」
 岩の中、そして海の底に潜む仲間たちがいっせいに驚きの声を上げます。
「君たち、一体どうしてたんだ! 脳波通信にもちっとも応答しないし…心配してたんだぞっ」
(悪りぃ。こっちもちょっくら手間取っちまっててな。だがそんな話はあとだ、008! とにかく今はあの恐竜のヤツを…)
 続いて入ってきた002からの脳波通信に、008が力強くうなづきます。
「よしわかった! それじゃ早速海面に出て、何とかあのロボットの頭部に…」
「ならばそれがしにお任せあれ!」
「俺も、行く」
 すかさず名乗りを上げて軽くうなづき合ったのは007と005、そして次の瞬間。
「そりゃぁぁぁぁっ!」
 掛け声もろとも巨大な鷲に変身した007が005の身体をしっかりとつかみ、一気に大空へ飛び上がったのでございました。
 いきなり海中から飛び出してきた大鷲に恐竜ロボットが気づいたときにはすでに005がその頭頂に降り立ち、元の姿に戻った007も右顎のボルトのすぐそばにぴったりと貼りついております。そして左右の顎のボルトを同時にスーパーガンで攻撃したのですからたまりません。たちまちボルトは熔けて砕け散り、恐竜の口ががくんと開きます。こうなればもうこっちのもの、005が先ほどの009同様、その口の真ん前に身を乗り出し、セットされていたミサイルを力任せに反転させました。それを見届けた007が再び大鷲に変身し、005とともにまたも大空に…ですが今度はわざとロボットの前をうるさく飛び回ります。もし恐竜ロボットがそんな彼らに向かってミサイルを放てばそれはそのまま身の破滅、すでに倒された四体のあとを追って大爆発するに違いありません。

 ですが、その有様は全てBG地下作戦司令部のモニターディスプレイにもくっきりと映し出されていたのでした…。

「あっ、パピちゃん! 005が恐竜ロボットのミサイルを反転させちゃったよ! このままミサイルを発射したら、ロボット自体が爆発しちゃうっ」
 叫び声とともにこちらを振り向いた横山くんに、パピはすっかり疲れきった様子で力なくうなづいただけでした。
「も、いーでちよお兄ちゃん…。ここは敵の作戦にはまったふりちてミサイル撃っちゃってちょうだいでち。こっちにも、あんまし愚図愚図ちてるヒマはなくなってきちゃいまちたからね…」
 言いつつちらりと背後に目をやれば、すっかりできあがった体のスカール様や幹部連が、ディスプレイの映像を肴に相変わらずの無責任な大騒ぎを繰り広げております。中には早々と酔いつぶれ、床に寝っ転がって大いびきをかいている者も一人や二人ではありません。そんな連中の飲み過ぎをたしなめ、かえって酔っ払いに絡まれているシロオスラシ大佐、そして床に転がっている連中を担ぎ上げ―おそらく一足先に脱出艇に放り込んでおくつもりなのでしょう―えっちらおっちら額に汗して運んでいくボグート氏の姿がいかにも気の毒でございました。
「じゃお兄ちゃん、次はコプラーズアームしゃんとフライングコプラーズしゃん出ちて地中と上空双方から攻撃させましょう。一つ目ロボットしゃんの残りは基地内に潜入ちた敵を足止めちてもらわなくちゃならないから大事にとっとくでち。…しょれと、奴らが基地にたどり着くまでは絶対合流させちゃいけまちぇん。気をつけてちょうだいでち」
「了解!」
 横山くんが指示通りにコンソールを操作するやいなや、ディスプレイにはまたしても、飛来するフライングコプラーズ、あるいは地中から出現したコプラーズアームに驚愕する00ナンバーどもの表情がアップで映し出されます。もちろん、背後の酔っ払いたちからはやんややんやの大喝采。
 そのクソ喧しい歓声の中、横山くんがそっとパピに尋ねました。
「ねぇパピちゃん、基本的な作戦はともかくとして、奴らを合流させちゃいけないってどういうこと? 愚図愚図してるヒマがないんなら、全員合流させて残りの在庫品を一気に片づけてもらった方が効率的なんじゃないの?」
 かちゃかちゃかちゃ。小さな前脚でコンソールを操りながら、パピが答えます。
「うん…確かにしょれはしょのとおりなんでちけどね、奴らがこの基地に潜入する前にできるだけ―『003』の体力を消耗させておきたいの」
 横山くんの目がきょとんと見開かれます。00ナンバー中唯一の女性サイボーグである003は元々一番生身に近く、体力も戦闘能力も決して高いとは言えません。正直、彼女を消耗させるくらいなら、もっと戦闘能力に秀でた009や004、そして002に集中攻撃をかけて戦闘不能にでもさせてしまった方がよほどこちらにとっては有利のような気がします。
 しかし、そんな疑問にもパピは静かに首を横に振っただけでした。
「どんなに体力や戦闘能力が低くても、003はあの裏切者しゃんたち全員の目、あるいは耳の役割を果たす重要なキーマン―あ、女性だからキーウーマンかな―でち。過去の戦闘データを見ても、奴らの作戦行動に003が参加ちていた場合の初回攻撃成功率は85.37%、そうでない場合は70.94%と、はっきりちた差が出てるんでちよ。まちてこのあと基地に誘い込んだとき、003に自爆装置やこの作戦司令部、脱出艇のありかなんかを透視されちゃったりちたら、しょの時点でボクたちの作戦は失敗ちてちまうでしょう。だから前もって彼女を潰ちておくんでち。…ちょっと、可哀想でちけどね」
 言われてディスプレイに目を戻せば、画面の中の003はあちこちに目を凝らし、耳を澄ませ…かなり疲弊している模様です。フライングコプラーズはともかくコプラーズアームは006同様熱線を吐いて地中を自由自在に動き回れる兵器、そんなのに応戦するには、さすがの00ナンバーどもといえども003に敵の居所を突き止めてもらわないことにはどうにもならないのかもしれません。
 ですが三方に分散した仲間たちからのひっきりなしの救援要請は彼女にとってかなりの負担であることは間違いなく…それでもなお、けなげな少女は休む間もなくあちこちを探って仲間たちに指示を出し続けていたようですが、やがてついに力尽きたか、がっくりと膝をついてしまったのでした。
 再び周囲から沸きあがる大歓声。ですが横山くんは喜ぶよりも何よりもただただパピの作戦の用意周到さに舌を巻くばかりです。
「ね…ねぇパピちゃん。君、一体どうやってこんな作戦思いついたの? 奴ら―00ナンバーどもについての情報なんか、スカール様だって自分だって、さほど詳しくパピちゃんに話しては…いないはずなんだけど…?」
 相変わらずコンソールの操作に忙しいパピ、今度は横山くんの方を振り向きもしません。
「あ、しょのへんの情報はみんな、ご主人様の端末からいただきまちた。ほらさっき、お兄ちゃんやご主人様が迎撃準備にてんてこ舞いちてたときはボク、完全に放ったらかされてたでしょ? あんまり退屈だったから、ご主人様の端末操作ちて、いろんな情報引き出ちて遊んでたんでち。そちたら偶然、あの00ナンバーしゃんたちのデータが引っかかってきてね…おっと、いけない」
 ディスプレイの中、003が限界に来てしまったことに気がついたらしい002・009、004・006の顔色が変わり、すぐさま救援に向かおうというそぶりを見せております。
「ここで加速装置なんか使われちゃったら、あとが面倒でちからね…」
 パピがまたしてもコンソールを操作すると、今や完全な自動操縦と化した無人のフライングコプラーズが002と009の頭上に急行し、機体中に開いた発射口から破壊光線を発射しつつ目にも留まらぬ速さで回転を始めます。めまぐるしく回転する発射口から放たれる破壊光線の軌跡はいつしか二人の00ナンバーの周囲を取り囲み、完全なバリヤーを形作ってしまいました。いかに加速装置といえども破壊光線―光の速さにはかないません。これではさすがの009も002も身動きが取れないというものです。

 ですがここで、ついにBG幹部大宴会にも限界が来てしまったのでした…。

「う…わぁぁぁぁっ! スカール様! おやめ下さいっ!!」
「スカールっ! お前、飲みすぎだっ! 頼むからほんの十分、いや五分でいい、休憩を…ほれ、この水飲んで…」
 耳をつんざくボグート氏とシロオスラシ大佐の絶叫に、完璧にできあがったスカール様のだみ声が重なります。
「え〜い、うるさいっ! パピ坊がこんなに頑張っとるのに飲まんでどうするっ…う〜いっ。こうなったら引越しだけではない、戦勝祝いじゃぁぁぁっ! ひっく。止めるなボグート、シロオスラシっ」
 必死にすがりつく幹部二人を払いのけたスカール様が取り上げたのは何と一升瓶。
「我が愛犬、可愛い可愛いパピ坊の健闘を祝して、スカール、一気行きまぁ〜っすっ!」
 ボグート氏とシロオスラシ大佐の顔が真っ青になりました。ここまで立派にできあがった酔っ払いに、さらに一升瓶の一気飲みなんてされたひにゃ、さすがの彼らの手にも負えなくなってしまうだろうことは火を見るよりも明らかです。
「パパパパピちゃんっ! 頼むから直ちに戦闘を終わらせて、00ナンバーどもをこの基地へ誘い込んでくれぇぇぇっ! こーなったら即座に自爆装置作動させて脱出せんと、このヨッパライが…ヨッパライがぁぁぁっ」
 見事に裏返ったボグート氏の叫び声にパピと横山くんの顔色も変わります。こうなったら直ちに作戦変更するしかありません。
「はぁぁぁぁ…できれば…この手だけは使いたくなかったんでちけどねぇ…」
 ため息混じりに、パピはそれでも最終命令を下します。
「対超音波砲、ヒドラV全機出撃! 目標は…003!」
「えええぇぇぇっ!」
 ああ、このチビ犬はどうしてここまで003にこだわるのでしょう。あっけにとられた横山くんの目に、今やぐったりとうずくまった少女と彼女を必死に守ろうとする005、007、そして008に襲いかかるヒドラV、対超音波砲の姿がぼんやりと映りました。ですが、次の瞬間。
「きゃあぁぁぁぁぁっっっ!!」
 絶体絶命の危機に陥った003の悲鳴が響き渡るやいなや、ディスプレイの別画面に映っていた009の表情が明らかに変わります。そして―。
「003―っ!」
 こちらも血を吐くような叫びだけを残し、その姿がぱっとかき消えました。続いて聞こえてきたのは、スピーカーがぶっ壊れるがごとき爆発音の連続。そして、それがようやくおさまってみれば…。
 たった今まで009がいたはずの地点には、どれもこれもきれいにばらばらにされたコプラーズアームとフライングコプラーズの残骸が転がっているだけでした。もちろん、009と002の姿は見えません。
「…003がキーウーマンだっていう理由はね、決して彼女の能力だけじゃないんでちよ…」
 言いながら、パピはまたしても大きなため息をつきました。
「どうやら、彼女と009は互いに憎からず思ってる間柄らしいでちね。そちて言うまでもなく009はあの裏切者しゃんたちの中でも最強と言われるサイボーグでち。ちかも、誰かを守ろうとするときの彼は通常にもまちて驚異的な強さ、その性能をはるかに超えた能力を発揮する…しょんな009が、003の命の危険を察ちたらどうなると思いまちか? 恋の力は偉大でち。もう彼を止められるものはこの世のどこにもありまちぇんよ。在庫品の残りなんて、あっと言う間に処分ちてくれるでしょう」
 そこで言葉を切ったパピ、最後にこっそり、小さな声でつぶやきます。
「だけどこの作戦はある意味、○ジラに興奮剤注射するようなものでちからねぇ…009が果たちてどこまで暴走するかはさすがのボクにも読めないし…かえってこのことで今後の展開に支障が出なければいいんでちけど」

 このささやかな不安がまさか的中するとは、パピとて決して思っていなかったでしょう。しかもそれは、必ずしも009一人のせいではなかったのです。
 …そう、さすがの天才犬、腹黒わんこと言えどもこの時点ではまるで気づいていなかったのでした。
 敵方の009ばかりでなく、味方にも…それも彼らのすぐそばに、どこまで暴走するかわからないゴジ○がもう一頭いることに…。
 


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